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南極海氷の拡大と温暖化

南極の海氷とペンギン

南極での降雪量の増加

北極海では、IPCCの予測を超えるスピードで海氷が減少しているが、
南極においては逆に「海氷が増加」している
(過去30年の衛星データによる)

海氷面積(年平均)
-1980年2010年増減率
北極1250万㎢1080万㎢▲14%
南極1150万㎢1250万㎢+9%

なぜこのような違いが起っているのか?

ジョージア工科大学の研究チームは、
1950~2009年の海面温度と降雪量の観測データを組み込んだ気候モデルに基づき
最新研究でそのメカニズムを解明し、発表した。

そのメカニズムとは以下のようなものである。

(1)海水温度の長期的上昇が、南極上層大気の降水形成を促し、積雪量が増加している。
(2)南極での積雪増加で、比較的暖かい深層水の湧昇(ゆうしょう)が阻害され、
   氷が解けにくい状態がつくられている。

つまりこういうことだ。

南極海は、本来、
上層は海氷形成によって塩分濃度が高い
⇒下降流が起こる
⇒それによって比較的暖かい深層水の上昇(湧昇)がおこる、
という循環があった。

この流れが、「降雪量の増大」によって変化している。

降雪増大⇒「上層での塩分濃度が低くなり」密度が低下
⇒下降流が弱まる⇒比較的暖かい深層水が上昇しない
⇒海氷の融解が減少(海氷拡大)する

地球温暖化による気候変動は、地域によって様々な現れ方をする。

降水量が減り、砂漠化が進む地域、
逆に集中豪雨の増加で、洪水などの被害が頻発する地域・・・。

南極では降雪量が増加している。
(昭和基地の観測でも、2009年の降雪量は、過去16年の1.5~2倍になっている)

南極での降雪量増加が海底海流の動きを変えてしまい
それが海氷の増大につながっているのである。

今後は、海氷減少に転じる?

では、今後も南極の海氷は拡大し続けるのだろうか?

研究チームのリーダーであるリュー・ジーピン氏は、
「人為的要因による急速な地球温暖化が南極地方の気候に影響し、海氷の融解を加速すると予測される」
と述べている。

温室効果ガスの増大によりさらに温暖化が進めば
南極ではさらに新たなメカニズムが動き出してしまうというのである。

南極海域の水温のさらなる上昇
⇒「降雪の増大」から「降雨の増大」への変化
⇒海氷が、降雨によって溶け出す
⇒太陽光を反射している海氷が減少することで、海が太陽光を吸収する
⇒水温がさらに上昇する
⇒さらに雪ではなく雨の量が増加する

こうして、海洋の温暖化と海氷の融解はさらに進行していくことになる。

リュー氏は「いつからとは断定できないが、今世紀中には始まるだろう」としている。

実際、南極海氷のデータを見ると、
硬く、割れにくい多年氷の割合が減り(1985年:40%⇒2010年:約5%)
薄く、割れやすい1年氷が増えている(1985年:18%⇒2010年:約50%)。

南極の海氷増加とは、地球温暖化によってもたらされているのであり、
さらに温暖化が進行すれば、今度は、急激な海氷の「減少」となって現れることになる。

リュー氏はさらに、
「南極の海氷の消滅は、世界中の海水の循環過程にも大きな混乱をもたらす可能性がある」
と指摘している。

南極沖の海洋には、地球で最も低温で高密度の海水があり、
これが、ベルトコンベアのように地球規模で流れる海洋大循環の“原動力”となっている。

「海氷の増加」から「減少」への転換が始まれば
地球規模での気候大変動に拍車がかかることになるのである。

現在現れている異常気象や北極海氷減少などは
地球温暖化の「初期症状」であり、
早急に温室効果ガスの削減に転じなければ
温暖化の暴走は止めることができない段階に突入することになる。

(2010/8/17)
 

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