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地球と生命の歴史
地球環境や地球温暖化の問題を考えるときに、
「地球の歴史」を把握しておくことはとても大切になります。
この豊かな生命を育む星は
どのように形成されてきたのでしょう?
そこには
・太陽から絶妙の距離と質量をもった惑星が生まれたこと
・生命が40億年かけてつくりだした大気構成
の2つの奇跡的な事情がかかわっています。
現在の地球環境は、46億年前の地球誕生からの
地球と生命の営みよってようやく手に入れた絶妙のバランスの上に成立しているのです。
では、地球と生命の歴史を振り返ってみましょう。
地球・・・金星・火星との違いはなぜ生まれたか?
惑星が豊かな生命を育むには
・適正な気温
・適正な大気構成
・オゾン層
が必要です。
「二酸化炭素」濃度が高ければ、温室効果によって高温になりすぎ、
酸素が少なければ、DNAを破壊する紫外線から生命を守る「オゾン層」が形成されない。
金星、地球、火星の現在の大気組成は以下である。
- | 金星 | 地球 | 火星 |
---|---|---|---|
気圧 | 90気圧 | 1気圧 | 0.0055気圧 |
気温 | 470℃ | 15℃ | -30℃ |
窒素 | 4% | 78% | 3% |
酸素 | 0% | 21% | 0.1% |
二酸化炭素 | 96.5% | 0.038% | 95.3% |
地球環境は、かつては金星とほぼ同じ状態だったと考えられています。
では、なぜ現在は、金星と地球はこんなにも環境が違うのでしょうか?
金星は、
●地球より太陽に少し近いため、気温が高く、水が液体の状態で存在できない。
●そして水蒸気が水素と酸素に分解され、
水素は宇宙空間に逃げ、酸素は他の物質と反応して無くなった。
●残った高濃度の「二酸化炭素」による強烈な温室効果により、
金星の表面は470℃という高温となり、生命が維持される環境が生まれなかった。
火星は、
地球から少し遠く、気温が低いため、水は氷の状態であり、
地球のように二酸化炭素を水が溶かすことができなかったため、
二酸化炭素が大気の主成分となっている。
金星、火星とほぼ同時期(46億年前)に誕生し、マグマの海であった地球は
少しづつ現在の大気組成を形成した。
地球誕生~海が生まれるまで(地球環境形成の始まり)
地球の歴史をごく大雑把に図示すると以下のようになります。
(図をクリックすると拡大します)
地球が誕生したころは、まだ隕石が降り注ぎ、その衝突エネルギーなどにより非常に高温で
マグマの海に覆われていました。(マグマオーシャン)
やがて鉄などの重い物質が中心部に沈み込み、
軽い物質は表面に集まり、
地球の重力が小さいこともあり水素・ヘリウムなどの最も軽い物質は宇宙空間に逃げました。
比較的重い物質である水蒸気(100気圧)、二酸化炭素(数十気圧)、二酸化硫黄(数気圧)が残り、
それが大気を形成し、
地上数百キロという高い位置に、水蒸気の厚い雲が形成された。
そして隕石の衝突も減り、地球は徐々に冷え始めるに従い水蒸気の雲は少しづつ下がって行きます。
気温が100℃を下回ると、水蒸気は雨となり、豪雨が「海を形成」。
(40億年前)
海の形成が、地球環境に大きな変化をもたらす。
二酸化炭素や二酸化硫黄などは海に溶け込み、減少を始めたのです。
原始地球は火山活動が活発で、岩石からなる陸地が形成されていた。
岩石が雨によって侵食されるようになると
岩石中のマグネシウム、カルシウム、ナトリウムなどが「陽イオン」となり
海に流れ込むようになる。一方、大気中の「二酸化炭素」は海中に溶け込んで「炭酸イオン」となり、
カルシウムなどの陽イオンと結合して、海中に沈みこんで行く。
こうして金星と同様に大量の二酸化炭素を保持していた地球は、
海の形成により、二酸化炭素を減少させるメカニズムを獲得し始め、
海から誕生した生命が、地球環境を大きく変えて行くことになります。
光合成生物の誕生、そして二酸化炭素の減少
地球誕生時の大気には、二酸化炭素酸素と一酸化炭素が60気圧も含まれていたが
現在の地球大気は、一酸化炭素はほとんど含まれず、二酸化炭素は0.0003気圧しかありません。
酸素は、濃度 0.02%(35億年前)⇒ 21%(現在) へと大きく増加しています。
地球大気の「酸素」濃度の推定値 | ||
---|---|---|
年代 | 酸素濃度 (%) | 出来事 |
46億年前 | - | 地球誕生 |
35億年前 | 0.02 | 光合成生命誕生 |
20億年前 | 0.2 | 藍藻の大繁殖 |
5億年前 | 20 | オゾン層の形成 |
0 | 21 | 現在 |
では、二酸化炭素はどこへ行き、酸素はなぜこれほど増えたのでしょう?
その答えは、生命の誕生・進化と繁殖の過程にある。
水、アンモニア、メタン、水素などに落雷が繰り返されてアミノ酸などの有機物が生まれ
ついに地球に原始生命が誕生。
世界最古の生命の痕跡としては、西オーストラリアの35億年前の地層から
最古の化石(藍藻に似た生物の化石)が発見されていますが
おそらくもっとも原始的な生命は40億年前に誕生しただろうと考えられています。
そして、海の形成により二酸化炭素が減り始めると
オレンジ色の分厚い二酸化炭素を含んだ雲が切れ目を見せ始め
地球に日光が差し込むようになり、
35億年前に、光合成をおこなう生命が活動を開始したのです。
この新たな生命・藍藻(シアノバクテリア)は、
水と二酸化炭素からブドウ糖などの有機物をつくり、酸素を吐き出すようになります。
生命の誕生と生命活動によって、地球は、二酸化炭素を減らす循環を得たのである。
酸素の増加とオゾン層の形成…生命がつくりあげた地球環境
藍藻(シアノバクテリア)が誕生し繁殖をはじめたことで、
地球の「二酸化炭素」は、減少の速度を加速さます。
ただし藍藻が排出した「酸素」については、
海底火山から噴出された鉄分、硫黄分の酸化にそのほとんどが使われたため、
酸素の増加は、長い期間、ほんのわずかなものでした。
(酸素と結合した鉄分は酸化鉄となり、海底に沈み、
現代社会を支える鉄鉱床を形成していった。)
しかし20億年前に
シアノバクテリアが世界の海にあふれるほどの大繁殖期に入り、状況が変わります。
鉄や硫黄などの鉱物に吸収されていた酸素は飽和し
余った酸素が大気に蓄積され始めます。
そして酸素の増加は、生命を育む地球環境の新たな転換をつくりだして行きます。
オゾン層の形成です。
生命体を破壊する「紫外線」が降り注ぐそれまでの地球は
地上はもちろんのこと海中の浅い所でさえ生命の存在が許されず、生命が誕生したのは紫外線の届かない海中深くでした。
しかし、大気中の酸素が増加し、
酸素が、紫外線と反応して「オゾン」を発生させ始めると
オゾンが紫外線を吸収するようになります。
オゾンにより紫外線が弱まると光合成生命体は、より浅い海中に浮上できるようになり、より多くの光を受けて、さらに活発な光合成をおこない、酸素の増加を加速。
酸素の濃度が現在に近い値となり、現在のようなオゾン層が形成されたのは
5億年前くらいだと考えられています。
ほぼ30億年にもわたる生命の長い長い活動が、
地球に、生命を育む環境をもたらしていったのです。
生物の進化と大絶滅、そして人間による大絶滅
地球が現在に近い環境を獲得すると生物の大爆発が起きます。
それまで(先カンブリア紀末期)は数十種類しか存在しなかった生物が
カンブリア紀(5億7000万年前~5億500万年前)には1万種類に達した。(カンブリア爆発)
三葉虫、エビやカニの祖先、サソリやクモの祖先、脊椎動物の祖先などが次々に現れました。
そしてコケのような植物が、生物としてはじめて上陸を果たし(5億年前)、
4億1000万年前には原始的なクモや昆虫、貝類が、
3億6000万年前には脊椎動物が上陸。
恐竜は2億2500万年前に登場し、1億5000万年前のジュラ紀には巨大恐竜時代。
こうして地球上では生物が進化し繁栄して行くのですが
その進化は「ヒト」の出現(400万年前)に至るまで直線的に進んだわけではなく
何度もの断絶期(大絶滅期)を経て現在の姿となっています。
その中でも特に大きな絶滅期を「5大絶滅」といいますが
これは隕石の衝突、マントル対流による超大陸出現、磁気圏の消滅などが要因です。
(恐竜の絶滅として知られる「白亜紀/第三紀境界の大絶滅」(6500万年前)は
直径10kmという巨大隕石の落下による地球寒冷化が引き起こしたものである。)
つまり、生物は
繁栄⇒大絶滅⇒新たな種の繁栄⇒大絶滅⇒新たな種の繁栄・・・
を繰り返す中で進化してきました。
ただし、ここで考えなければならないのは
宇宙活動や地球活動によって起ってきた大絶滅と
現代における「人間の活動によって引き起こされている大絶滅」の違い。
恐竜の絶滅は、数日で起ったわけではなく
隕石の落下から「2,000,000年」(=200万年)という長い時間を経て絶滅に至っています。
しかし現在、
わずか数10年の間に人間が行った化石燃料使用、オゾン層の破壊、森林破壊、砂漠化などによって
1年に1,000種が絶滅しており、
今世紀末には全生物種の1/4が絶滅すると考えられている異常なスピードでの大絶滅期にあるのです。
地球の歴史を「1年」に例えると・・・人間にできること
地球の歴史をもう一度振り返ってみましょう。
地球の歴史を「1年」としてみると | ||
---|---|---|
- | 出来事 | 時期(年前) |
1月1日 | 地球誕生 | 46億年 |
2月10日 | 海の形成 | 41億年 |
3月30日 | 光合成生命の誕生 | 35億年 |
7月25日 | 藍藻の大繁殖 | 20億年 |
10月13日 | 多細胞生物の出現 | 10億年 |
11月16日 | 生命の爆発的進化 | 5.7億年 |
11月28日 | 最古の陸上植物 | 4.2億年 |
12月13日 | 恐竜の登場 | 2.5億年 |
12月26日 | 恐竜の絶滅 | 6500万 |
12月31日 午後5時 | 猿人の登場 | 360万 |
12月31日 午後11時36分 | 人類の誕生 | 20万 |
46億年前の地球誕生を「1月1日」として、現在までを「1年」にたとえてみます。
少しずつ気温を下げた地球で雨が降り始め
海が形成されたのは「2月10日」ころ。
光合成生命が誕生したのが「3月30日」ころ。
そして、海と光合成生命の働きで何10気圧もあった二酸化炭素は、奇蹟的な減少を始めました。
藍藻が大繁殖して(7月25日ころ)酸素が増え始め、オゾン層の形成(11月15日ころ)によって
生命を育む地球環境が形成されました。
つまり、地球誕生(1月1日)から11月半ばまでの長い長い期間を経て
二酸化炭素、酸素、オゾン層などの環境が整い
生命の爆発的進化(カンブリア爆発、11月16日)の時代になったのです。
では、「ヒト」の誕生は?
直立歩行を行うヒトの祖先(猿人)が登場するのは
「12月31日午後5時」ころ。
そして私たち人類(ホモ・サピエンス)の登場は
12月31日の午後11時30分を過ぎてから。
狩猟によって生活していた人類は、道具を使い、農耕を始め、ついに産業革命を起こして、地球がこれまで蓄積してきた資源(化石燃料など)の大量使用を始めます。
二酸化炭素の増加、オゾン層破壊、森林破壊や砂漠化などの地球環境の異変をもたらした人間のこの間の活動は、地球史を1年にたとえたときに、
最後の「1秒以下」のことです。
生命が誕生してから営々と築かれてきた地球環境は
人間によって、
わずかコンマ何秒で、
積み上げてきたものを貪りつくそうとしている。
人間は、これだけの破壊ができる能力をち、
そして同時に、破壊から再生へと転換する能力もまた同時に備えています。
地球のこれからの歴史は、
これからの私たち人間の選択と行動に委ねられているのです。