パーム油と環境破壊

インドネシア・マレーシアのパーム油生産

パーム油とは、アブラヤシの果実から採取される植物油。

植物性油脂の生産量としては、2005年に大豆を上回り第1位であり、
マーガリン、チョコレート、シャンプー、洗剤、口紅、ベビーフードなど様々な製品・食品に使われている。

パーム油生産の2大国は、
インドネシア(世界生産の51%、2012年)、マレーシア(同37%)であり、
両国の生産だけで世界の88%を占めている。

アブラヤシ(オイルパーム)が北アフリカから移植されたのは1896年であり、
1960年代からパーム油生産は増加の一途たどるようになり、特に1990年代に急増を始める。

パーム油生産が急増した背景には、
干ばつなどの気候変動に弱い大豆や菜種に比べ、安定した生産が期待できること、
面積当たりの生産性が高いこと、などがあげられる。

インドネシアでは、生産されたパーム油の80%が輸出され、260万人の雇用をもたらしている。(2006年)

さらにインドネシア政府は、「国家バイオ燃料計画」を発表し、
石油輸入を減らす再生可能なエネルギー源として、パーム油からのバイオディーゼル生産に注力し始めた。

パーム油と森林・環境破壊

一方、パーム油増産による森林破壊が深刻な問題を引き起こしている。

パームオイルプランテーション面積の推移

オイルパームプランテーションは、1990年からの12年間で
 ・インドネシアは3倍に
 ・マレーシアは2倍に
増加し、
東南アジアでは日本の国土の1/3もの面積でアブラヤシ栽培が行われている。

広大な森林の伐採により、
象、トラ、オランウータンなどの絶滅危惧種の貴重な生息地が消滅し、先住民族の生活の場が破壊され
プランテーションの非人間的な労働環境なども社会問題化して行く。

東南アジアの森林地帯の「泥炭層」には
世界の化石燃料使用量100年分の炭素が貯蔵されているのだが、
森林伐採により、この泥炭層が失われ、
大量の水を必要とするアブラヤシによって乾燥・分解され、
二酸化炭素の放出が始まっている。

一般にはエコなエネルギー源と考えられているバイオディーゼル。

しかし、アブラヤシ栽培のために泥炭森林を伐採した場合は、石油由来ディーゼルを使う場合の50~136倍もの温室効果ガスを発生させる。
(オーストラリア連邦科学産業研究機構の試算)

森林伐採、泥炭層の分解、森林火災などによる大量の二酸化炭素の排出により、インドネシアは、実質、「世界3位の温室効果ガス排出国」とされる。
(公式の排出量では21位だが、泥炭から6億㌧のCO2が排出されているため)

持続可能なパーム油生産へ

では、パーム油生産は止めるべきか?

実は、アブラヤシ栽培に、必ずしも森林伐採は必要ない。

2003年、パーム油生産と森林破壊の関係を断ち切るために
「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)が発足した。

パーム油生産・販売に係る大企業、プランテーション経営者、小規模農家、銀行、製油業者、パーム油を使用する食品会社、メーカー、小売業者、貿易商社、NGO、NPOなど
500以上の団体が参加し、新たな仕組みがつくられ、運営されている。

その一つが「持続可能なパーム油のための認証制度」であり、
以下の項目が第三者機関により厳しくチェックされる。

 ・原生林伐採の禁止
 ・プランテーション内での野生動物保護
 ・適正な賃金の保障
 ・地域住民の土地と地権保護

これらの基準を満たすものが「RSPO認証パーム油」とされ
検証結果等は公表されている。

ただし、この仕組みだけでパーム油による自然破壊などの問題が解決するわけではない。

世界中のより多くの人が関心を持ち、製品を厳選し、
各国政府が「RSPO認証」の製品への表示を義務化するなど、より徹底した仕組みにすることが必要だろう。


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