ドイツの再生可能エネルギー制度見直し

(News2013/01/30)

ドイツ政府は、再生可能エネルギーの普及制度の見直しに入った

内容は、
 ・家庭や企業の電気料金に上乗せしている普及負担金の2年間凍結
 ・負担金が際限なく増加する現行制度自体の見直し

ドイツは再生可能エネルギーを普及させるため、1991年に固定価格買取制度を導入し、
2004年には再生可能エネルギー法(EEG)を制定している。

一般家庭などで太陽光などで発電した電力は、地域の電力会社が全量を買い取り、
買取価格が欧州電力取引市場の価格を上回った場合、差額を国民・企業が負担する制度となっている。

しかし、割高な太陽光発電が急速に普及したことにより負担金が近年急増した。

再生可能エネルギーの1次エネルギーに占める比率(日本、ドイツ)

2013年の負担金は、1kw時当たりで5.3ユーロ(約6円40銭)と、1年で5割増となり、
負担金総額は200億ユーロ(約2兆4000億円)にもなる。

国民や企業は負担金の増額に不満を募らせており、
ドイツメディアの世論調査では国民の過半数が負担金増額に反対している。

ドイツ政府は8月にも関連法案を成立させ、見直しを進めて行く方針だ。

2014年の負担金を2013年実績の横ばいにし、それ以降は2.5%の上昇に抑え込む考え。

エネルギー需要をどう賄うか?
見通せない着地点

ただし、事態はまだ流動的である。

産業界は「国際競争力にとってマイナスだ」と抜本的な見直しを要求しているが
再生エネルギー関連業界は、当然にも反発を強めている。

太陽光発電設備においては中国企業が低価格でシェアを急伸させ
ドイツの太陽光設備大手のQセルズは2012年に法的整理に追い込まれ
ソーラーワールド社も業績が急速に悪化している。

制度が抜本的に見直されればドイツ製太陽光発電がさらに窮地に追い込まれることは必至だ。

また、今後のエネルギー・電力供給体制をどうするかという問題も絡む。

ドイツは2002年に原子力法を改正し
 ・原子炉の運転期間は原則32年
 ・新設の原子力発電所建設を認めない
など段階的原発廃止を路線化しており、

さらに福島第一原発事故を受け
 ・1980年以降に建設された原発の稼働停止
 ・日本の原発事故を受け、8基の原発稼働を停止し、今後も継続
などの方針をとっている。

原発から脱却しつつ、二酸化炭素の排出量を削減しようとするならば
再生可能エネルギーの普及をさらに加速させなければならないが
普及のための負担金の重みが足かせとなっている状況だ。

ドイツの再生可能エネルギー産業を守り、経済をけん引する産業に発展させるのか?
原発からの脱却を継続するのか?
火力へ傾斜するのか?

まだ明確な絵が描かれているわけではない。

ドイツのエネルギー政策は岐路に立っている。

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