メタンハイドレート

メタンハイドレートは、「メタン」と「水」が結合した化合物

メタンは、天然ガスや腐敗した動植物から発生する無色無臭の気体で
火をつけると青い炎をあげて燃える。
(ハイドレートは、水が他の物質と結合してできた化合物を指す。)

メタンハイドレートは、「燃える氷」とも言われ
マイナス80℃以下の低温と、23気圧以上の高圧という高温高圧下でつくられシャーベット状になっている。

1㎥のメタンハイドレートを解凍すると
160~170㎥のメタンが得られるため
地中に気体で存在する天然ガスに比べ資源量が大きいとされる。

シベリアやアラスカの永久凍土の地中、水深数百メートル以上の海溝陸棚などに存在する。

日本近海のメタンハイドレートと課題

メタンハイドレートが注目されるようになったのは、日本近海で大量のメタンハイドレートが存在することが確認されたため。

南海トラフと呼ばれる太平洋の海底深さ500メートル以下のところに大量のメタンハイドレートが眠っており
日本海側などを含め、日本近海には、日本で消費される天然ガス100年分の量が存在すると推定される。

ただし実用化には多くの課題がある。

メタンハイドレート埋蔵推定地域

採算性

海底地下に存在するためコスト上の問題がある。

石油や天然ガスは掘削すると容易に自噴するが
メタンハイドレートは固体であるため自噴しない。

・蒸気や海水を送り込み、溶かして採掘する。
・メタンハイドレートの下に存在するメタンガスを採掘する。
などが考えられているが、まだ模索の段階と言える。

採掘技術に膨大な費用がかかるため、現段階では市場コストに見合わないというのが現状。

安全性

メタンハイドレートの開発に伴う環境への影響は最も懸念されているところだ。

・メタンを海中、海上に漏洩させないか。
・メタンを含む水が海に拡散し、生態系への悪影響が出ないか。
など課題は多い。

メタンは、二酸化炭素の約20倍の温室効果をもっており、
メタンハイドレートは海底に非常に微妙な形で存在しているため
未熟な技術で開発を急ぐと取り返しようのない暴走を招くおそれがある。

メタンハイドレート開発は進むか?

実用化に課題が多いことから開発を主導するのは公的な研究機関が担っている。

2001年には「石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)」「産業技術総合研究所」などにより
「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム」が発足し、採取方法などの研究が行われている。

また、産業技術総合研究所は「メタンハイドレート研究センター」を2009年に発足させ、2012年夏以降には、明治大学などが網走沖や秋田・山形沖で試料の取得に成功し、メタンハイドレートが日本近海に広域に分布する可能性が高まってきた。

福島原発事故を受け、「火力への傾斜⇒輸入燃料費の増大⇒貿易収支の赤字化」という状況下で、国内資源=メタンハイドレートへの期待は膨らみ始めている。

ただし、安全性確保を軽視して開発に前のめりになれば
福島原発事故を引き起こした過ちを繰り返すことになりかねない。

膨大な炭素を海底に固定しているメタンハイドレートを大規模開発し、何らかの事故が起った場合
その環境への破壊的影響は原発事故以上のものになりかねないのである。

現在、研究段階から、厳重な規制が敷かれているのもそのためである。

日本の他では
米国、中国、インド、韓国などがメタンハイドレートの技術開発を進めている。