環境問題と地球温暖化TOP > 地球温暖化 > 砂漠化
砂漠化
「砂漠化」の問題を考えるときの「砂漠」とは、
私たちがイメージする「砂だけの土地」ということではない。
森林伐採や過放牧などで「緑が失われ、不毛化した土地」、すなわち「土壌荒廃地」のことをいう。
国連環境会議(UNEP)は、
「砂漠化とは、乾燥・半乾燥・乾燥亜湿潤地域における
気候変動と人間活動を含む多様な要因による土地の劣化」
と定義している。(1992年の地球サミット)
この定義に基づく調査によれば
・砂漠化にさらされている土地は、3600万㎢。
(もともと砂漠だった土地を除いた面積)
・全陸地の25%が砂漠化にさらされている。
・全人類の1/6もの人々が砂漠化の影響を受けている。
・毎年、6万㎢が砂漠化している。
つまり、砂漠化に悩まされているのはアフリカだけではない。
中国は国土の34.6%が砂漠化しており(1996年に中国政府自身が発表)、
インド、パキスタンのアラル海周辺地域、オーストラリアなどでは「塩害」による砂漠化が
深刻な問題となっている。
砂漠化に直面している国は100カ国以上ある。
砂漠化の原因
砂漠化は、「人為的要因」に「自然的要因」が加わることで引き起こされる。
主な「人為的要因」には以下がある。
- 過放牧
- 休耕なしの降雨依存農業
- 灌漑農業
- 過伐採と薪炭
- 森林伐採などによる土壌侵食
また、「自然的要因」には、気候変動による干ばつなどがあるが
近年では地球温暖化の影響も指摘されている。
地球温暖化による低緯度地方(赤道に近い地域)の気候変動シュミレーションでは
雨がもともと多い地方はますます多雨に、少ない地方はますます少雨になると予測されており、
温暖化が砂漠化問題をさらに深刻化させる可能性がある。
そして、
地球温暖化そのものが「人為的要因」によって引き起こされようとしていることを考えれば
「砂漠化は、人間の活動の結果として引き起こされている」と言いきってしまっても
誤りにはならないだろう。
砂漠化をもたらす「人為的要因」
過放牧
ある土地のある面積に生える草には限度があり
そこで養い得る家畜の頭数には限度がある。
その限度を超えた放牧をおこなえば、家畜は根こそぎ草を食べるようになり、
植生が再生されにくくなり、土壌侵食を引き起こす。
また、近年多くみられる遊牧民の定住化政策は
家畜の集中化(過放牧)の原因となっており、
薪材として樹木が伐採され、
草の栄養となっていた糞を乾かして燃料に使うなどが行われ
砂漠化の原因となっている。
休耕なしの降雨依存農業
雨水だけに頼って行う農業を「降雨依存農業」という。
(夏に雨が降る地域では400~600mm/年
冬に雨が降る地域では250~500mm/年 の地域でみられる農業)
土壌に蓄えられたわずかな水分を利用するために
最低1~2年の休耕期間を要するが、
「休耕」を行わないで農業を続けると、土壌中の水分がなくなり
またたく間に食物の育たない「砂漠化した土地」になってしまう。
灌漑農業
砂漠化の対抗するように行われている灌漑農業も
「塩害」を引き起こし、砂漠化の原因となっている。
灌漑で、土地に大量の水をまくことで地下水位が上昇する。
↓
水位が上がった地下水が、毛管現象によって土や砂の間を通って
地表付近に上がってくる。
(このときに、「土中の塩分」を一緒に地表付近に運ぶ)
↓
乾燥地では水分の蒸発が激しいため、塩分だけが地表にたまる。
これが「土壌の塩積化」(塩害)であり、
その結果、食物の育たない土地になる。(砂漠化)
(インド、パキスタンで灌漑による塩害が深刻である。)
森林伐採
森林伐採や焼畑農法は、木の根が持つ土壌保持力・水分保持力を失わせ
バサバサになった土が、大雨や風などで流出し、土壌侵食を起こす。(砂漠化の原因)
また、オーストラリアでは、森林伐採による「塩害」が砂漠化を招いている。
森林を大量伐採することで土地の保水力が失われる。
↓
雨水が地下にしみこみ、地下水面を上げる。
↓
水位が上がった地下水が、毛管現象によって土中の塩分と一緒に地表に上がる。
↓
低地の広い土地で「塩害」がおこり、食物が育たない土地となる。
過伐採、薪炭
国 | 総エネルギー中の植物エネルギー比率 |
---|---|
ボツワナ | 58% |
ブルンジ | 95% |
エジプト | 25% |
エチオピア | 94% |
ガーナ | 63% |
ケニア | 86% |
サハラ以南のアフリカ、インドなどの乾燥地帯では
樹木を燃料として使い、
それが過伐採を招き、砂漠化を引き起こしている。
日本の薪炭用樹木は20~30年で成長するが
乾燥地帯では、数十年から100年近く成長に要するため、
元来、乾燥地帯では「枯れ木」が燃料として使われてきた。
しかし、人口急増、とくに都市人口が急増する中で
「生木」が燃料として使わるようになり
過伐採により砂漠化が進んでいる。
薪炭は、アフリカなどで家庭用燃料として使用され、
タバコや紅茶の葉の乾燥、煉瓦製造などにも使われている。
砂漠化面積と砂漠化比率
砂漠化面積と砂漠化比率 UNEP・1984年 カッコ内は砂漠化率
地域 | 放牧草地 | 降雨依存農地 | 灌漑農地 |
---|---|---|---|
アフリカ(スーダンサヘル) | 380万㎢ (90%) | 90万㎢ (70%) | 3万㎢ (20%) |
アフリカ(南部アフリカ) | 250万㎢ (80%) | 52万㎢ (65%) | 2万㎢ (20%) |
アフリカ(地中海アフリカ) | 80万㎢ (80%) | 20万㎢ (15%) | 1万㎢ (30%) |
アジア(西アジア) | 116万㎢ (85%) | 18万㎢ (75%) | 8万㎢ (15%) |
アジア(南アジア) | 150万㎢ (80%) | 150万㎢ (65%) | 59万㎢ (25%) |
アフリカ(中国・モンゴル) | 300万㎢ (70%) | 5万㎢ (50%) | 10万㎢ (10%) |
オーストラリア | 450万㎢ (30%) | 39万㎢ (20%) | 2万㎢ (15%) |
南米・メキシコ | 250万㎢ (75%) | 31万㎢ (65%) | 12万㎢ (10%) |
北米 | 300万㎢ (50%) | 85万㎢ (25%) | 20万㎢ (20%) |
大陸別・放牧地の砂漠化(土地劣化)面積 UNEP・1991年 単位:1000ha
大陸 | 砂漠化面積 | 砂漠化率 (砂漠化面積/放牧面積) |
---|---|---|
アフリカ | 995,080 | 74% |
アジア | 1,187,610 | 76% |
オーストラリア | 361,350 | 55% |
ヨーロッパ | 80,517 | 72% |
北アメリカ | 411,154 | 85% |
南アメリカ | 297,754 | 76% |
砂漠化を防止する対策
砂漠化を防止するためには、
その土地で砂漠化が引き起こされている原因を把握しなければならない。
砂漠化は
その土地の気象条件、土、水、植生によって形成されている自然環境に対し
環境が維持できる以上の破壊要因が加わることで始まる。
したがって、砂漠化防止は、その地域に応じた対策が必要になる。
原因別に考えられる対策は以下。
砂漠化防止の対策 | |
---|---|
放牧地 | ・放牧管理の徹底 ・過放牧が進んでいる場合は、柵などを設置して家畜から草を守る。 ・生産力の高い牧草を育てる。 |
降雨依存型農業 | ・自然降水の有効利用 ・適切な期間の休耕 ・休耕中の土地管理 (雨季の前に土地を深く耕す。…水分を土層内に蓄える) (乾季には、浅く耕し、雑草を除去して水分蒸散を防ぐ) |
灌漑地 | ・適切な水の管理 (適量の灌漑、排水設備、用排水路の保守) |
土壌侵食 | ・食物を植えて、被覆率を増やす。 ・防風林 |
乾燥地 | ・植林(砂防対策、地面の湿潤化をもたらす) |
砂漠化防止の国際的取り組み
「砂漠化」という言葉が国際的に初めて使われたのは
1977年、ケニアのナイロビで開催された「国債砂漠化会議」においてである。
そして1992年の地球サミットでアジェンダ21が採択され、
その12章として「砂漠化と干ばつに対する対処」が付け加えられた。
これを受けて1994年に国連条約『砂漠化対処条約』が採択された。
(深刻な干ばつまたは砂漠化に直面している国における砂漠化に対処するための国際連合条約)
(日本政府は1998年にこの条約を批准した)
国連環境計画(UNEP)は、1984年、1991年に砂漠化の現状報告を刊行したが、
2002年の「持続可能な開発に関する世界サミット」時には報告書が出されなかった。
つまり、地球サミットで砂漠化防止の取り組みを強化することが決定したが
現実はその後あまり進んでいない。
砂漠化対処条約
全40章からなる砂漠化対処条約は
アフリカ諸国などの開発途上国において深刻化する砂漠化問題に対し、
国際社会がその解決に向けて協力することを規定している。
条約の概要は以下。
- 砂漠化の影響を受けている国・地域が、「砂漠化防止行動計画」を策定、実施する。
- 先進諸国は、当該計画・取り組みの資金援助と技術移転などの支援を行う。
- 締約国会議の下に「科学技術委員会」を設置し、専門家による研究を行う。